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かかりつけの歯医者さんで定期健診と保健指導を受けれます

第7回 「コモンリスクファクター」について 

添付PDF【胃がんとピロリ菌】

 

皆さん、こんにちは。

 

POPS研究会代表の呉です。

 

先日、POPS研究会で僕が「コモンリスクファクター」についてお話ししました。そこでコモンリスクファクターとは何か、また、歯科からどのようにコモンリスクファクターを応用して、ヘルスコーチングにつなげていくかについて解説します。

 

―コモンリスクファクター

 

WHOによるとNCD(non-communicable disease)非感染性疾患による死亡者数は年間3800万人にも上ります。一方、内戦や紛争で犠牲になるのは毎年15万人です。さかのぼって、第一次世界大戦で犠牲になった死者数は4年で1000万人です。このNCDによる死亡者数3800万人というインパクトがどれほどかお分かりになると思います。(ここではNCDを「慢性疾患」、「生活習慣病」と同義とします)

 

従来、疾患、がん、糖尿病など様々な慢性疾患はそれぞれ全く別の病気と考えられてきましたが、今日ではこれら病気には共通の危険因子、コモンリスクファクターの存在が明らかになってきました。

 

政府が揚げる健康施策、健康日本21で、健康のための個々人の行動目標として、「栄養、食生活、身体活動、運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣」とあります。実はまさにこれらが図のように慢性疾患(生活習慣病、NCD)を引き起こすコモンリスクファクターになります。

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

 

そしてこれらのコモンリスクファクターが戦争や紛争をはるかに凌ぐ、NCDという大きな脅威になって人類を脅かしているのです。

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

 

―歯科からコモンリスクファクターアプローチ

 

POPSのホームページ(「一般の方へ」を参照)にも掲載しているように、歯科はあらゆる世代が頻回に通所する医療機関です。
我々健康増進型歯科医院では、定期健診受診者を中心にこのコモンリスクファクターへの働きかけを長くできる機会が、多くあたえられているわけです。

 

しかしながら、歯科を受診する患者は当然このようなNCDに関心があるのではなく、口腔内に関心があります。
臨床現場で、保健指導(ヘルスコーチング)を行うにあたって、この異なる関心事が保健指導を(とりわけ初期導入)を難しくしています。
そこで口腔内に関心がある患者にどのようにNCDやその根源となるコモンリスクファクターに関心の目を向けることができるかを解説します。

 

一見関係のないところから、どのように関係が生まれるかの一例を見てみましょう。

 

お気に入りのバーがあります。そこでは自分の好きなお気に入りのカクテルや気さくなマスターがいます。
あなたがそこでお気に入りのカクテルを片手に、マスターとの会話を楽しんでいます。その時に見知らぬお客さんがお店に入ってきました。
最初は当然そのお客さんとは何のつながりもありませんが、マスターはそのお客さんが馴染みで知っています。
マスターとあなた、そしてマスターとお客さんというラインで会話をしているうちに、例えばたまたま、ゴルフの話題になって、あなたとお客さんがゴルフを趣味にしていて、会話が三者でつながります。
このようにA(マスター)とB(あなた)、A(マスター)とC(お客さん)が繋がっていると、B(あなた)とC(お客さん)が繋がるということはよくある話ですよね。

 

 

このような状況が健康増進型歯歯科医院でコモンリスクファクターに対するヘルスコーチングをするうえで、大きなヒントになります。 

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

図のように歯周病が菌血症によって、心臓で内膜炎を起こし、また喫煙習慣が心疾患のリスクを高めるといことで、歯周病と喫煙習慣という一見、関係のないコモンリスクファクターが繋がります。
そうすると、心疾患を治すために、歯周病という口腔疾病を歯科医院で管理しながら、ヘルスコーチングによる行動変容で禁煙しようという提案がコーチ(衛生士)からしやすくなるわけです。
歯周病と喫煙が心疾患の共通の敵になっていることを理解してもらえ得ると、歯科から禁煙に対するヘルスコーチングがよりスムーズに行くわけです。

 

上の例は歯周病(口腔疾病)をコモンリスクファクターとしていますが、口腔疾病をNCDとしてとらえるパターンもあります。

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

図のように砂糖はカリエスのリスクを高めると同時に、易消化性炭水化物として、血糖値を速やかに上げて、糖尿病のリスクを高めます。
この場合は、砂糖は虫歯(口腔疾病)と糖尿病というNCDのコモンリスクファクターになるわけです。
したがって、砂糖の過剰摂取(不適切な食事)よって、虫歯(口腔疾病)と糖尿病が引き起こされるという構図を理解できると、砂糖の過剰摂取に対する行動変容のモチベーションが強化され、ヘルスコーチングがしやすくなります。

 

このように歯科からコモンリスクファクターアプローチをスムーズに行うには、口腔疾病をコモンリスクファクターとしてとらえる方法と、口腔疾病をNCDとしてとらえる方法の2つのパターンがあることを理解する必要があります。

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

 

口腔疾病はコモンリスクファクター!

 

慢性疾患を引き起こすコモンリスクファクター

では、口腔疾病をコモンリスクファクターとしてとらえるパターンを何例か上げてみましょう。

  1. 「歯の本数が少ないとHbA1cが高くなる傾向がある」歯の欠損(口腔疾病)→HbA1c高値(糖尿病)
  2. 「口腔ケアしていると肺炎リスクが減る」口腔内多量プラーク(口腔疾病)→肺炎(呼吸器疾患)

 

 

次に、口腔疾病をNCDとしてとらえるパターンです。

  1. 「少数歯群(19本以下)は多数歯(20本以上)と比べると、閉じこもりのリスクが高い」歯の欠損(口腔疾病)→閉じこもり(身体活動低下)
  2. 「少数歯群はエネルギー摂取量が少ないが、炭水化物の摂取量は多過」歯の欠損(口腔疾病)→バランスの悪い食事

 

このように、口腔疾病を内容に応じて、コモンリスクファクタ−やNCDとして使いわけ、歯科と一見無関係な他のコモンリスクファクターに対するヘルスコーチングや行動変容につなげていきます。

 

この考え方は、「一緒にいる」からはじまるヘルスコーチングのチャート(POPS研究会ホームページ「DAY14」を参照)と同様に健康増進型歯科医院の根幹をなす考え方ですので、少し難解かもしれませんが、是非理解していただきたい考え方です。

 

また、この考え方を上手く利用するには、あらゆる全身と口腔の関係を日々学んでブラッシュアップしていかなければなりません。
図でお示ししたように、各コモンリスクファクターと各NCDが有機的にたくさんの矢印で結ばれれば、結ばれるほど、またそれらの矢印がより太くなれば、太くなるほど、歯科からのヘルスコーチングはより強化されるのです。

 

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次回のPOPS研究会では、歯科衛生士の中村が、20年以上当院に定期健診で通っていらっしゃる81歳の男性の症例検討会を行います。
上記のコモンリスクファクターも応用して発表する予定ですので、お楽しみにしてください。日時は6月14日(木)1時から2時を予定しております。

 

 

さて、今回の健康ブログは「胃がんとピロリ菌」です。胃の中にピロリ菌がいると、胃がんになりやすいというのは皆さんもご存じだと思いますが、それを裏づける論文をご紹介しています。
また、このピロリ菌は完全に胃の中から駆除することは難しく、食習慣を改めることが一番大事です。その食習慣とはなにか、またある家電が胃がん減少に貢献しています。
それは何でしょう。
健康ブログをお読みになって、患者さんにもお配りいただけると幸いです。

 

POPS研究会代表
呉 沢哲

 

 

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