病は夜つくられる☁☽☁

 

「単位人口当たりの医師数が多く、年間医療費が高い自治体ほど健康寿命が短い!」

2012年6月に厚生労働省から我が国初の健康寿命のデータが公開されました。茨城県立こころの医療センター病院長の土井永史病院長はこの2012年のデータをもとに、各都道府県別で、健康寿命に対して、一人当たりの年間医療費や10万人当たりの医師数を調べました。その結果、驚いたことに、医療費が高く、医者が多い都道府県では、健康寿命が短く、逆に医療費が低く、医者が少ない都道府県では健康寿命が長かったのです。土井医師は「『現在の医療の平均的効果を長い目で見た場合、かえって国民の健康を損ねている』という可能性を示す。」としています。

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「ありふれた病」と「万病の素」

高血圧、糖尿病、心筋梗塞、精神疾患など、私たちが気づくような「ありふれた病」の陰に「万病の素」となる病が潜んでいます。土井医師はそれが「睡眠障害」だとしています。普段の生活習慣が皆さんの健康状態に大きく影響を及ぼします。睡眠障害の代表的なものが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。これは睡眠中に10秒以上の無呼吸や血中酸素濃度低下を伴う浅い呼吸が頻回に生じる病態です。SASの罹患者数は300万人と推定され、それ以外の睡眠障害を入れるとかなりの数になります。実は、自分の睡眠障害を気付かずにやり過ごしている人が多くいます。本物の上質うどんを味わったことがない人は、本物のうどんがどんなものかわからないように、もとから、質のいい睡眠を経験したことがない人は、自分が睡眠障害だと気づきません。気づかずにほっておくと、寝ているときに、本来リラックスしたり休んでいるときに働く、副交感神経があまり働かず、寝ている間も、活動的な状態で働く交感神経が優位になり、血圧が上がりやすくなったり、日中にイライラしたり、疲れやすかったりと様々な問題が現れます。原因がわからない本態性高血圧と診断され薬をのみ続けても、血圧はさがりません。睡眠障害で交感神経が慢性的に優位に働いているからです。実際、土井医師によると、いい睡眠をとれる治療を施すことで、すぐに血圧が正常に戻る症例が多くあるようです。お子様の多動障害ADHDも睡眠障害がかかわっているといわれています。図のように様々な病気とSASの合併率をみると、様々な病気が睡眠障害と関わっていることが示唆されます。私たちはありふれた病の陰に睡眠障害のような「万病の素」があることを疑わなくてはなりません。この「万病の素」をたたない限りいくら医者にかかっても健康寿命を延ばすのは困難になります。

 

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睡眠障害を疑うリスク因子

筋力低下、肥満、鼻づまり、お酒、面長な顔貌、小下顎です。

心当たりがある人は、睡眠外来で相談されるほうがいいと思います。睡眠外来に行けば、睡眠検査(睡眠ポリグラフなど)で、自分の睡眠の質を測ることができます。

 

 

歯科は睡眠障害を早期発見できる場所!

歯科はあらゆる世代が頻回に通所する医療機関です。しかも、お口の中をじっくり観察して、下顎の後退の有無、軟口蓋・舌の高さなど上気道の状態を評価できる場所です。歯科はマウスピースや歯列拡大矯正などで、睡眠障害の治療を提供できる場所でもあります。(詳しくはスタッフまで)

 

 

医科歯科連携で

実は、睡眠障害はお口と多くのことがかかわっているにも関わらず、歯科では診断も直接の治療もできません。まして私たちは大学教育でも教わっていませんでした。ですから、歯科で早期に睡眠障害を発見して、医科で診断していただいて、潜在的な患者を助け、万病の素を断ち、健康寿命延伸に貢献できるものと考えます。

 

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上記にあるような睡眠障害のリスク因子に心当たりがある人は、当院か最寄りの耳鼻科や睡眠外来に相談してみてはいかがですか。なお、睡眠時無呼吸用のマウスピースは歯科医院で保険(3割負担で7~8千円)で作成しますが、睡眠外来などの紹介状がなければ作成できません。なので、いずれにせよ、心当たりがあれば、まずは睡眠外来で睡眠の質を測ってもらうことをお勧めします(^^)
「恒志会会報 平成29年度 Vol.12」より