深夜訪問 在宅の命つなぐ

お年寄りができるだけ長く自宅で暮らせるように厚生労働省は6年前、24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と呼ばれる介護保険サービスをつくりました。当時、切り札とされたサービスは今、どう利用されているのか。全国に先駆けて導入した社会福祉法人・射水万葉会の事例から現状と課題を考えます。

 

 

 

午前3時過ぎ富山県射水市の一軒家に、この日夜勤の女性介護福祉士、今村一文さんは血圧計などが入ったバッグを持って、訪問先の寝たきりの女性(98)が暮らす家の中に家族と約束している方法で静かに入り、気配に目を覚ました女性に「よく眠れましたか」と微笑みました。手早くおむつを交換し、血圧などを測って全身の状態を確認した後、喉の動きに注意しながらコップで慎重に栄養価の高いジュースを飲んでもらいました。

女性は物を飲み込む力が衰えて、専門職がいなければ食事や水分補給が難しく、最も手厚い介護が必要な要介護5で深夜も含め1日4回訪れる今村さんら職員の介助が頼りです。女性は昨年夏に入院先の病院で「老衰であまり長くない」と告げられ、「最期は家で」と自宅に戻りました。同居する60歳代の息子家族は共働きで、「仕事など、これまでの生活を続けながら介護できるのは訪問のおかげと感謝しています。

今村さんはこの日、午後10時~翌朝7時までを担当し、市内で暮らす85~98歳の自宅約10軒を1~2回ずつ訪れ、緊急の呼び出しに備えました。

 

 

 

同県内5か所でサービスを行う同法人の利用者は約130人。一人暮らしや高齢者2人きりの世帯が多く、同居する家族がいても仕事などで家を空けるため、日中は独りになる人がほとんどです。訪問回数は人によって1日あたり1~7回で、平均で約3回。1回あたりの滞在時間は20分未満のことが多く、おむつ交換や水分補給、就寝時の着替えや準備など、「自宅で生活を続けるのに必要」と判断したタイミングで訪問し、適切な介助をします。

一方、月あたりの電話相談は計約150回。同法人では、利用者の居室にテレビ電話を設置して、リモコンのボタンを押せば24時間、いつでも担当者と話せます。相談内容は「寂しいので話がしたい」や「おむつがぬれて気持ちが悪い」「車椅子にうまく乗れず、転倒してしまった」など様々で、訪問が必要な場合は職員が急行します。利用者や家族の満足度は高く、年間約10人が自宅でサービスを利用しながら最期を迎えます。

 

 

 

 

 

 

どんなサービスを提供してくれるの?

深夜や早朝、緊急時も含めて24時間、いつでもヘルパーの人が自宅を訪問して、水分補給や食事の介助などをしてくれます。具体的には、あらかじめ訪問時間や介助の内容が決まっている「定期訪問」と、緊急時の「随時対応・随時訪問」があります。「随時対応・随時訪問」は、病院のナースコールのように、テレビ電話などの通信機器を使って介護福祉士などの資格を持つ職員に24時間365日連絡を取ることができ、状況を話し必要と判断されれば職員が駆けつけます。

 

 

 

 

 

 

費用は?

サービスの特徴は、介護保険が使えて、必要があれば訪問回数が増えても利用料が定額という点です。

 

 

 

 

利用方法は?

このサービスを使いながら、日中は施設に出かけてレクリエーションや体操などをして過ごすデイサービスに通うなど、他のサービスを組み合わせることもできますが、対応する介護事業所はまだ全国に約870か所しかなく、利用できない地域も多いので、まずは介護プランを作る専門家のケアマネジャーに相談してみましょう。

 

 

大阪府下の指定事業所数(平成28年12月末)     厚生労働省の資料から

 

大阪市(15) 吹田市(1) 富田林市(2) 羽曳野市(1)
堺市(3) 高槻市(1) 寝屋川市(1) 摂津市(1)
岸和田市(2) 枚方市(2) 河内長野市(1) 藤井寺市(2)
豊中市(3) 茨木市(2) 松原市(1) 東大阪市(7)
池田市(1) 八尾市(2) 箕面市(1) 交野市(1)

 

参考:読売2018年11月19日(月)、読売2018年11月20日(火)