週末寝だめは危険、長期化で心身に悪影響

先進国中、最も平均睡眠時間が短い日本中でも平日の睡眠不足とそれを補う週末の寝だめを繰り返す睡眠変動は「社会的ジェットラグ(時差ぼけ)」と呼ばれ、健康への影響が心配されています。

 

 

 

 

「長時間続くと大きな疾患のリスクになる。平日に睡眠を分散させる工夫が必要だ」と国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所(東京)精神生理研究部の三島和夫部長はアドバイスしています。

 

社会的ジェットラグは、仕事などで個人の体内時計(生体リズム)に合わない生活スケジュール(社会時刻)を強いられることで心身の不調を生じる状態。何かとやりくりできることから延々と続きやすいです。

 

週末の寝だめで眠気は取れるが、心身への悪影響は回復しないことが研究で分かってきている。多くの人が自覚しない睡眠不足を抱えている可能性が高い」と三島部長は話しています。

 

個人の睡眠習慣は入眠時間帯必要睡眠時間の組み合わせで決まります。社会的ジェットラグの計算法は平日の睡眠中央時刻と休日の睡眠中央時刻の差。例えば平日0時~6時、週末2時~11時の睡眠の人はそれぞれ中央時刻が3時と6時半なので差は3.5時間です。

 

三島部長は「こういう人は結構いる。これは毎週末、インドに旅行している生活と同じ。何とかなるが、それなりに負担がかかる。」と話しています。

 

 

若い世代で顕著

調査によると、世界の実態は社会的ジェットラグ1時間以上の人が約7割おり、特に若い世代で顕著だといいます。週末に寝だめする生活は、いったんはまると悪化します。平日の短時間睡眠→週末の寝だめ→週明けの寝起き困難→午前の日照暴露の減少→就寝時刻の後退、と悪循環になります。

 

 

 

 

 

朝の光を浴びる

三島部長は「朝の光を規則的に浴びる(目に入れる)ことが非常に大事。午前中、起きて4時間以内の光は体内時計を前進させ、早起きしやすくする。夕方から深夜の光は体内時計を後退させて夜型が進む。特にパソコンなどで青色光(ブルーライト)が体内時計に作用することが分かってきた。」と話しています。

 

目に入る光は体内時計を介して覚醒作用や抗うつ作用、自律神経の調整、血糖の調節などの効果があるといいます。社会的ジェットラグの健康リスクは、食欲増進による肥満、インスリン抵抗性の上昇で糖代謝に悪影響、悪玉のLDLコレステロール上昇、認知機能の低下、メタボリック症候群の増加、メンタルヘルスの悪化、口腔乾燥などが報告されています。

 

三島部長は「数カ月続けるのはいいが、10年~30年も続けると大きな疾病のリスクにつながる。この脱却には、まず朝の光を浴びること。そして夜の光を避けること。3~4週間リズムを保つと、リバウンドが起こらずに寝付けて安定し、だんだん朝起きの苦しみが緩和する。」と話しています。

 

一方、年代的に夜型が最も強いのは20歳前後です。欧州の6万人のデータは思春期・青年期は早起きが苦手であることを示しています。一部の人は気力だけでは乗り越えられないこともあるといいます。

 

三島部長は「問題は、いくら仕事があっても、その人が睡眠に価値を見出せるかどうかに尽きる。少なくとも長期的にはリスクがあるということを知ってほしい」と話しています。

参考:山梨日日(共同)2018年4月3日(火)