第11回 咀嚼の効能(その3)

咀嚼の効能(その3)

こんにちは

ツインデンタルクリニックの呉(おう)です。


今日は「噛むことでエネルギーバランスを整える」についてお話いします。


 食事の時にカロリーを気にされるかたは多いかもしれませんが、そのカロリーをどのように摂取しているかも大事です。普段、経口で摂取しますが、場合によっては点滴で、あるいは胃ろう(胃に管を通す方法)で摂取する場合もありますが、どれだけ噛んで身体に栄養を送り込むかは非常に大事です。


 例えば、通常、成人男性の必要な一日のエネルギーは2500kcal程度、女性で2000kcal程度ですが、胃ろうでは男性で1400kcal、女性では1100kcalです。

 食事を取ると、食事誘導性熱産生というエネルギーが体内から放出して、エネルギー代謝が起こりますが、口から栄養をとるしかもよく噛むとこの食事誘導性熱産生が多く代謝されます。逆に寝たきりで胃から栄養を摂ると、この熱産生は少なくなり、代謝も著しく低下します。口は「命の入り口」なのです。


 また、歯の本数と栄養素を相関するデータがあります。歯の本数が減ると総エネルギーやあらゆる栄養素のカロリー数は減りますが、唯一増える栄養素があります。何だと思いますか。炭水化物です。炭水化物は軟食のものが多く、柔らかく調理しやすく、しかもタンパク質などより低分子で消化吸収がいいので、歯の少ない人は炭水化物で総エネルギーの不足分を補っていると考えます。

 結果的に歯の少ない人は炭水化物が過剰になり、高血糖、糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。


 歯が少なくても、入れ歯などの人工物でも機能的で噛めるものを入れれば、歯のある方に近い状態で、咀嚼できるようになり、バランスよく栄養摂取が可能になります。


 ちゃんと噛むためのお口(=命の入り口)の環境を整えて、栄養的にも硬さ的にもバランスの良い食事を心がけてみてはいかがでしょうか。

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